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2013/10/04
画像にでないめまい
ゆうえん医院 結縁先生
2013/07/11
膝外傷における画像診断
川崎医科大学・スポーツ外傷整形外科学 阿部信寛先生
2013/05/09
腎癌の凍結療法について〜IVRセンター開設のご案内とともに〜
岡山大学病院放射線科 郷原英夫先生
その他の記事

放射線の健康影響について〜患者さんの疑問に答えるための基礎知識〜

【 岡山画像診断センター副院長 清哲朗先生 】
2011年3月福島原発事故発生後、国民の放射線の健康影響に対する関心と不安が高まっている。我が国は国民皆保険制度と広く行き渡った放射線診療装置のため、世界的に見ても医療被ばく大国とされているが、過去20年で国民1人当たり医療被ばくは1.5倍あまり増加したと推計されている。患者側の放射線被ばくに対する不安が高まった現在、医療従事者は医療被ばくのリスクを理解し、患者側の疑問にわかりやすく答える必要がある。放射線を考える上で必要となる単位(シーベルト、グレイ、ベクレル)の概略を説明した。また、放射線の人体に対する影響に関しては原爆被爆者の健康調査から導き出されたしきい値のある影響(確定的影響)、しきい値が無いとされる影響(確率的影響)について線量とその反応の関係について説明した。身近な放射線被ばくとして、自然放射線の現状と地域による多様性を紹介した。
 現在までに行われた高自然放射線地域の疫学研究の結果では,低線量被ばくの健康影響は低リスクに留まると考えられている。低線量被ばくの健康影響の説明に用いられる直線しきい値なしモデルは、防護の上で安全側に立って対策を講じるための概念であり、生物学的真実と証明されたわけではなく、人体においてその証拠を統計学上は明確に捉えることが出来ない程度の範囲である。リスクを定量的に理解するには、放射線以外の発がんリスクとの比較も有用である。画像診断に用いられる放射線は、比較的多いとされるCT検査でも10mSv前後程度と低線量被ばくに属し、過去の疫学研究で有意な健康影響が証明されないレベルに留まるため、医学的適応がはっきりしている場合であれば利益がリスクを明らかに上回る。ただし放射線感受性が成人の三倍程度に見積もられている若年者に対する医療被ばくやスクリーニング目的の検査には、十分な配慮がなされるべきである。

病診連携とフィルムレス診療におけるフリーソフト活用法〜MacintoshとOsiriX導入について〜

【 岡山大学病院放射線部 清哲朗先生 】
2008年の診療報酬改正で、デジタル画像保存加算が導入されて以後、病院の規模を問わず急速にフィルムレス化が進行している。モニタ診断は、従来のフィルムを使った画像診断と比べ閲覧に関する自由度の高さが大きな特徴であり、MDCTや高分解能MRI、PET-CT等の大量のデータを短時間に効率よく閲覧するには、もはや欠かせい手法である。ところが、小規模施設や個人レベルで本格的なモニタ診断の導入には高いコストが障害になってきた。さらに、現在では他施設に画像データを受け渡す際にCD/DVDなどのメディアを用いることが一般的となったが、閲覧アプリケーションの操作性の悪さ、受け取った画像データの再利用のしにくさが診療上の大きな制約となっている。加えて、管理状況のわからない他施設のメディアを自施設の端末で開くことは、ウイルス感染リスクの問題もはらんでいる。一般的なWindowsベースの商用PACSシステムでも、これらの問題にある程度対処は可能だが、高機能やきめ細かい対応を求めれば費用対効果比が悪くなるという問題を抱えている。
MacinoshOS X上でオープンソースソフトとして開発されたOsiriXは、無料でありながら高価な商用画像閲覧ワークステーションに匹敵する高度な閲覧環境を実現できるばかりでなく、データの入力、加工、DICOMタグ編集、保存、出力など、フィルムレス診療を行う上で必要となる高度かつ多彩な機能を搭載しており、これを既存の環境に導入することにより、セキュリティ対策にも優れたフィルムレス診療を低コストで実現できる。本講演では、OsiriX最新版の操作を実演しながら、診療に直接に役立てることが出来る3D表示、重ね合わせ表示などの多彩な閲覧方法や、メディアを介した画像データ入力、DICOM画像の加工、出力方法について紹介した。

MRIの安全性の考え方〜MRIオーダーするその前に〜

【 岡山画像診断センター画像技術部 穴見大吾 】
2001年7月。米国の病院でMRI装置への酸素ボンベ吸着事故が発生。術前検査のために鎮静下にあった当時6歳の男児の頭部に酸素ボンベが直撃し、残念ながら2日後にその男児は死亡した。MRI装置のもつ危険性を再認識させられた事故である。MRI検査を行う上で、安全性に影響を与える要素は4つ。静磁場による力学的作用、傾斜磁場による神経刺激および騒音、そして高周波(RF)による発熱である。静磁場による力学的作用は、前述の事故のような外的因子のみではなく、体内に埋め込まれたステントやクリップといった金属についても同様に作用する。実際に、ペースメーカーや脳動脈クリップが埋め込まれていたことによる死亡例も過去に報告されている。また、高周波による発熱についても、直接的な人体への影響のみならず、体内に埋め込まれている金属が原因での発熱も起こりうる。さらには、装置の高磁場化に伴い、これら4つの生体への影響はますます大きくなる。特に、高周波の与えるエネルギーについてはSAR(比吸収率)といった値で管理されているが、1.5Tから3.0Tに静磁場強度が2倍になれば、そのエネルギーは4倍になる。
生体への影響だけでなく、MRI装置自身がもつ危険性もある。クエンチと呼ばれる現象で、冷却のために使われている液体ヘリウムが気化するのである。その膨張率は700倍にも達する。クエンチが起きた場合、通常は排気ダクトを通じて外部へ放出されるが、排気が上手くいかず検査室内に漏れた場合には、ヘリウム自体には毒性はないものの、空気中の酸素濃度の低下により窒息の危険性が出てくる。故に、MRI検査室では常に酸素モニタで空気中酸素濃度を測定している。
今回の勉強会では、まずはMRI検査の裏にひそむ危険性について解説をさせていただいた。その上で、検査を実施する際に、実際にどういった金属に対して注意が必要なのか、どういった患者様に対して注意が必要なのかを踏まえながら、当センターにおける安全性への取り組みについて紹介させていただいた。今回の勉強会を機に、MRI検査の併せ持つ危険性について再考していただければ幸いである。

臨床画像から考えるMR信号理論〜なぜ造影剤なしで血管が写るのか〜

【 岡山画像診断センター画像技術部 松下利 】
CTの画像コントラストはX線が透過しやすいかどうかで決定される。X線が透過しやすい組織は黒く、透過しにくい組織は白く描出される。一方、MRIの画像コントラストは、頭部単純検査を例に挙げても、実に様々な画像コントラストを呈する。その理由は、MRIでは人体内のプロトン(水素原子核)の挙動を画像化していることに起因する。画像化の過程でプロトンは励起と緩和を繰り返すが、緩和の過程は2種類存在し、組織ごとに緩和の仕方もそれぞれ異なる。その緩和の違いが信号の強弱として捉えられることで画像コントラストとして反映される。そして、プロトンが示す2種類の緩和を各々画像に反映させたものが、T1強調画像およびT2強調画像と呼ばれる画像となる。また、MRIではプロトンをターゲットにしているために、組織に含まれるプロトンの絶対数がなによりもまず画像に反映される。そのため、靭帯や神経といった繊維組織や石灰化病変は常に低信号もしくは無信号となる。例として挙げるならば、石灰化した胆石はCTではX線を通しにくいために白く描出されるが、MRIではプロトンの数が少ないために無信号となる。しかしながら、プロトンの挙動を画像に反映するがために、血液中のプロトンから信号を収集することで造影剤を使わなくとも血管を描出することが可能となるのである。MRAで励起の方法を通常の撮影方法とは変えることで、静止した周辺組織と動く血流との間に信号強度差を作りだしているのである。
今回の勉強会ではまず、画像の成り立ちについて理解していただくために、画像化の過程における励起と緩和、基本画像であるT1強調画像とT2強調画像について簡単に述べさせていただいた。また、実際に我々が先生方に提供させていただいているMRCPやMRA、拡散強調画像などの画像についての解説、さらにはGd造影剤が高信号になる理由、投与量が多すぎると信号が低下する現象についても解説をさせていただいた。今回の勉強会を機に、MRIの画像について、多少なりとも興味を抱いていただければ幸いである。

高精度放射線治療

【 岡山大学病院放射線科 勝井邦彰先生 】
放射線治療は癌治療の三本柱の一つとして効果を上げてきました。放射線治療は1980年代までは二次元的に行われ、1990年に入り三次元に進化し、現在では三次元原体照射が標準治療となっています。さらに近年は高精度放射線治療として、臓器の位置移動を補正して治療する画像誘導放射線治療(image-guided radiation therapy:IGRT)、分布を変形させてリスク臓器への線量を低下させる強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy:IMRT)、ピンポイント治療である肺定位放射線治療が行われるようになってきています。岡山大学はこれらの治療を行えるようになり、会では概説させていただく予定です。

前立腺が日々位置移動している様子

左図:計画時の位置  右図:ある日の照射直前の位置
IGRTにおいては移動補正をして治療します。