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2013/10/04
画像にでないめまい
ゆうえん医院 結縁先生
2013/07/11
膝外傷における画像診断
川崎医科大学・スポーツ外傷整形外科学 阿部信寛先生
2013/05/09
腎癌の凍結療法について〜IVRセンター開設のご案内とともに〜
岡山大学病院放射線科 郷原英夫先生

脳梗塞急性期について

【 岡山大学病院神経内科 出口健太郎先生 】
1965年をピークとして、脳卒中自体の発生数は一時的に減少したが、1990年より下げ止まっており、逆に高齢化社会の進行に伴って、脳梗塞患者数は年々増加を続けている。一般に脳の血流が22〜23ml/100g/分より低下すると、脳細胞は機能的障害に陥り始め、やがて時間経過とともに不可逆性の梗塞壊死に陥ってしまう。したがって、脳梗塞治療の基本戦略は、血流改善療法と脳保護療法の2点であり、前者においては、この10数年間に、血流改善療法としてオザグレルNaやアルガトロバン、さらには、梗塞発症3時間以内でのアルテプラーゼ(tPA)による血栓溶解療法が登場してきた。一方で、後者においても飛躍的な病態解明を受けて、脳卒中の臨床現場には新しい脳保護療法、すなわちフリーラジカルスカベンジャー・エダラボンが登場し、現在ではほとんどの脳梗塞患者で使用されている。
また、これらの治療は、できるだけ早く開始されることが重要であり、そのためには、短時間で正確に脳梗塞急性期の診断がなされることが求められ、これまで、CT、MRIなど、各種画像検査の進歩にも支えられてきた。
今回の勉強会では、脳梗塞急性期のアルテプラーゼ血栓溶解療法の実際、エダラボン治療の現状、今後認識しておいたほうがよい画像検査、脳梗塞と間違いやすい疾患・病態の検討について議論し、さらに今後求められる脳梗塞急性期の診断技術・治療法の展望を考えていきたい。

高精度放射線治療

【 岡山大学病院放射線科 勝井邦彰先生 】
放射線治療は癌治療の三本柱の一つとして効果を上げてきました。放射線治療は1980年代までは二次元的に行われ、1990年に入り三次元に進化し、現在では三次元原体照射が標準治療となっています。さらに近年は高精度放射線治療として、臓器の位置移動を補正して治療する画像誘導放射線治療(image-guided radiation therapy:IGRT)、分布を変形させてリスク臓器への線量を低下させる強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy:IMRT)、ピンポイント治療である肺定位放射線治療が行われるようになってきています。岡山大学はこれらの治療を行えるようになり、会では概説させていただく予定です。

前立腺が日々位置移動している様子

左図:計画時の位置  右図:ある日の照射直前の位置
IGRTにおいては移動補正をして治療します。

腰痛の診かたと考え方

【 岡山赤十字病院整形外科 高田英一先生 】
腰痛の診察に際し、まず最初に気を付ける事は“本当に腰痛であるか?”ということです。内臓器疾患や股関節痛などで腰痛を主訴に来院される方も多く見られます。
腰痛もしくは背部痛であることが確認できたなら、次に痛みの原因の病態を考えます。発症様式により運動器の障害によるものか?変性によるものか?血管性や腫瘍性のものか?おおよその見当がつきます。次に正確な痛みの場所を探します。高位、内外側、深部などで運動器のどの組織が原因かを考えます。そこから神経所見をはじめとした診察を行うことで痛みの原因の病態、組織の場所を考えることができます。
次に画像診断に入ります。レントゲン、MRI、CTは原因と考えられた場所をねらって指示を出します。検査の中心の場所がずれるだけで、見逃しや関係のない異常所見を原因として考えてしまう危険性があります。MRIなどの検査は考えられた病態に合わせた検査の指示を出します。レントゲンで十分か?前後屈レントゲンが必要か?MRIが必要か?MRIよりCTの方がよいのか?病態に合っていない検査は誤診のもとになります。あくまで画像所見には身体所見の一致が必要です。
痛みの原因となる診断が確定した後に治療を開始します。通常、最初は保存的加療を行います。ただし麻痺や骨折、感染、腫瘍を認めた場合は早急な専門医の診察が必要と考えられます。保存的加療を行っても神経症状の進行を認めたり、症状の改善がなくADL障害を来たしている場合には、保存的加療をあきらめ手術加療を考慮に入れる必要があります。特に神経症状がある場合は手遅れになる前の手術療法が勧められます。現在は脊椎外科も内視鏡下手術などのMIS(最小侵襲手術)がすすみ、ご高齢の方でも手術翌日に離床しており、1-2週間の短期入院でADLの改善が期待できます。患者さまに“歩きたい”というご希望があれば90歳以上の方でも手術を行い満足いただいています。

よくみる肺疾患のCT診断 −肺炎と塵肺を中心に−

【 尾道市立市民病院放射線科 三船啓文先生 】
前半は「肺炎の診断にCTは必要か?」という疑問について講演した。肺炎は症状、血液検査、胸部単純X線写真での異常影で診断することが一般的であり、日本医学放射線学会による「エビデンスに基づく画像診断ガイドライン−2007」では市中肺炎の診断にCTが必ずしも有用とされていない。一方、肺炎の陰影を指摘すること、肺炎以外の疾患との鑑別、重症度の把握、原因菌の推測、治療効果判定の各項目において実際の症例を提示しながら、撮影されたCTの正確な読影により診断的有用性が高まることを解説した。
後半は、初期には軽微な所見ゆえ的確な診断が困難である「い草染土塵肺のCT診断」について、塵肺全般の話にも触れながら講演した。徐々に進行する経過や、抗酸菌感染の合併、また他の肺疾患との鑑別などが画像診断上必要な知識であり、正確な病歴の聴取と胸部CTでの慎重な経過観察が重要であることを解説した。